産業用X線CTを扱うための資格

導入と運用に必要な知識と準備

電球のX線透過像

産業用X線CTは、製品の内部構造を非破壊で可視化できる強力な検査手段として、製造・開発・品質保証などさまざまな現場で導入が進んでいます。
導入を検討する中で多くの方が気にするのが、「操作や管理に資格が必要なのか?」という点です。
実際には、産業用X線CTの操作自体に資格は必要ありません。しかし、X線という放射線を取り扱う以上、法令で定められた届出や管理体制の整備が求められます。特に装置導入時と、運用中の安全確保に関する部分では、適切な有資格者の配置と社内教育が重要になります。

電球のX線透過像

放射線を扱う上で必要な「資格」と「手続き」

産業用X線CTは、X線を発生させる装置であることから、労働安全衛生法の規制対象となります。装置を設置・使用する事業所では、労働基準監督署へ「放射線発生装置設置届」の提出が義務付けられており、導入時にはX線の遮蔽構造や作業環境などを記載した設置計画書を提出し、所定の条件を満たした上で使用を開始する必要があります。使用後も、漏洩線量の定期測定や安全点検の実施を通じて、作業環境の安全性を継続的に確保しなければなりません。
また、実際に作業を行う場所では、管理区域ごとに「エックス線作業主任者」という労働安全衛生法に基づく国家資格保有者を1名以上配置する必要があります。作業主任者は、装置の使用に関わるリスクを管理し、点検・作業ルールの策定・教育などを担う責任者として位置づけられます。もっとも、一般的な産業用CT装置は照射エリアが完全に遮蔽されており、装置外部は管理区域と見なされない構造となっているため、エックス線作業主任者を必要としません。
しかしJMCでは、より高い水準での安全管理と、X線技術に対する理解の深化を目的として、すべてのエンジニアに対しエックス線作業主任者の取得を義務付けています。

実務で求められるスキルと役割分担

電球のX線透過像
電球のX線透過像

装置そのものの操作やスキャン業務に関しては、特別な資格は必要とされません。ただし、操作ミスによる被ばく事故や装置の破損、誤った条件設定による画像劣化などを防ぐためには、十分なトレーニングと装置特有の知識が不可欠です。
多くの現場では、以下のような役割分担がなされています。

エックス線作業主任者:安全管理、届出対応、定期点検の統括
装置オペレーター:スキャン条件の設定、撮影操作、撮影ログ管理
解析担当者:3D再構成、欠陥抽出、寸法測定、レポート作成

これらのうち、特に3D再構成や解析業務に関しては、ソフトウェアの習熟度や製品知識が品質に直結します。たとえば、VGStudio MAXなどの専用ソフトウェアを扱う場合、メーカーが提供する操作研修を受講することで、解析スキルを体系的に習得することが可能です。

電球のX線透過像X線発生のしくみ

まとめ

産業用X線CTで正確な結果を得るには、装置の選び方や安全管理の知識、解析スキルが欠かせません。
JMCでは、複数のCT装置を使い分けるだけでなく、社内の全エンジニアにエックス線作業主任者資格を取得させることで、より高い安全性と専門性を両立しています。設備・技術・人材の三位一体で、最適な検査環境をご提供しています。